申告敬遠成功率
2018年シーズンの申告敬遠成功率。ここでの申告敬遠における成功とは申告敬遠選択後に無失点でそのイニングを切り抜けること。タイトルでは便宜上、成功率といっているが、本文中では失点確率が成功率を指す。
申告敬遠は失点確率を下げるのか
申告敬遠とは、基本的には守備側が塁を埋める作戦をとることで、目的としてはアウトを取りやすくして失点を防ぐことである。
まず最初に申告敬遠自体が本当に失点確率を下げる効果があるのかどうかを確認しておく。
Season | R% | RE |
---|---|---|
2018 | 31.1 % | 0.56 |
R%: 得点確率 RE: 得点期待値 |
Season | R% | RE |
---|---|---|
2018 | 29.3 % | 0.65 |
R%: 得点確率 RE: 得点期待値 |
上の表(申告敬遠状況時の失点確率と得点期待値)は、申告敬遠が選択された時のアウトカウントと塁状況の頻度で各状況の得点確率と得点期待値(RE24)を重み付けし、申告敬遠が選択された状況における平均的な得点確率と得点期待値を算出したもの。これに対し下の表は実際に申告敬遠が選択された際の得点確率と平均得点をまとめたもの。
この二つの表を比較して分かるのは、申告敬遠選択時は得点確率が若干下がり、得点期待値は上がるということだ。つまり、申告敬遠(=塁を埋める作戦)とは失点率(得点期待値)を犠牲にして失点確率を下げる作戦ということになるだろう。
2018年 申告敬遠成功率
■ 各指標について
- IBB_NP%は1点リードから3点ビハインドまで・四回以降・1アウトもしくは2アウトでランナーありかつ一塁が空いている状況で申告敬遠を選択した割合
- R%は失点確率(=申告敬遠を選択したイニングで失点した割合)
- REは失点率(=申告敬遠を選択したイニングでの平均失点)
- WPAは申告敬遠選択時の勝利期待値とイニング終了時の勝利期待値の差を合計したもの
■ リーグ平均
IBB_NP%: 申告敬遠選択率 IBB_NP: 申告敬遠 R%: 得点確率 RE: 得点期待値 |
まず申告敬遠選択率(表中IBB_NP%)の機会を『1点リードから3点ビハインドまで・四回以降・1アウトもしくは2アウトでランナーありかつ一塁が空いている状況』としているのは、申告敬遠が行われる主な状況がこれだから(リンク)。
数字としては、セ・パともにほとんど違いはないようである。また、申告敬遠自体がサンプルの少ないイベントなので、単年の数字でどう評価するかというのもあるだろう。
先に述べた状況での申告敬遠選択率はおよそ10%、申告敬遠選択後の失点確率は約30%(成功率という言い方でなら70%)、平均失点率は0.65点となっている。
■ チームごとの申告敬遠成功率
Tm | Lg | IBB_NP% | IBB_NP | R% | RE | WPA |
---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | PL | 6.5 % | 11 | 18.2 % | 0.36 | 0.41 |
巨人 | CL | 9.4 % | 21 | 20.0 % | 0.30 | 0.19 |
オリックス | PL | 10.8 % | 27 | 23.1 % | 0.35 | 0.22 |
阪神 | CL | 10.6 % | 24 | 25.0 % | 0.54 | -0.07 |
楽天 | PL | 14.6 % | 36 | 28.6 % | 0.83 | 0.63 |
ロッテ | PL | 14.1 % | 27 | 29.6 % | 0.70 | -0.28 |
ヤクルト | CL | 10.1 % | 24 | 30.4 % | 0.78 | -0.79 |
DeNA | CL | 17.9 % | 56 | 30.8 % | 0.77 | -0.18 |
中日 | CL | 3.2 % | 6 | 33.3 % | 0.33 | -0.62 |
広島 | CL | 14.4 % | 25 | 36.0 % | 0.72 | 0.35 |
日本ハム | PL | 10.7 % | 22 | 36.4 % | 0.77 | -1.47 |
西武 | PL | 3.1 % | 5 | 60.0 % | 0.80 | -0.44 |
IBB_NP%: 申告敬遠選択率 IBB_NP: 申告敬遠 R%: 得点確率 RE: 得点期待値 |
WPA: 勝利貢献度 |
成功率が最も高かったのはホークスで失点確率18.2%。もっとも、申告敬遠を行った回数自体が少ないが。
表中のWPAは申告敬遠選択時の勝利期待値とイニング終了時の勝利期待値の差を合計したもの。つまり、プラスになっていれば勝利確率を高めたといえるし、マイナスならその逆。作戦として効果があったかどうかの一つの目安になるだろう。
WPAが最も高かったのはイーグルス。申告敬遠を選択する割合も比較的高いし、効果としても上々だったということになる。
ところで、WPAが失点確率によらず差が出るのは成功時・失敗時のレバレッジ(局面の重要度)に差があるため。例えば、サヨナラのような大いにレバレッジ高まる場面で失敗した場合の勝利に対するマイナスの貢献度と、5点ビハインドのような勝敗に対してほとんど影響を与えないような場面で成功した場合の貢献度とをイメージしてみると良いと思う。