バント成功率ランキング

 2018年シーズンのバント成功率。ここでのバント成功率とは犠打の成功率のこと。より正確には犠打が記録されるシチュエーションでのバント成功率。打席結果がバントでないものは含まれない(スリーバント失敗は含まれるが、ツーストライクまでバントを試みその後ヒッティングに切り替えたケースなどは含まれない)。

2018年 バント成功率

 まず最初にリーグの平均値を見ておこう。また成功率だけではなく、企画率や犠打成功時の得点確率なども確認する。

■ 各指標について
  • SHA%はノーアウト・走者一塁・3点リードから1点ビハインドまでの状況でバントした割合
  • SH%は1アウト以下・走者ありの状況でバントをした際の犠打成功率(バント安打含む)
  • R%は犠打成功時の得点確率
■ リーグ平均
2018年 リーグ 犠打成功率
LgSHA%SHBuHSH%R%
セ・リーグ28.7 %5791872.0 %45.2 %
パ・リーグ31.4 %5382581.8 %46.7 %
Glossary
SHA%: 犠打企画率
SH: 犠打
BuH: バント安打
SH%: 犠打成功率
R%: 得点確率

 NPBで犠打が記録されるのはノーアウト・走者一塁・3点リードから1点ビハインドまでの状況に集中しているので、これを機会として犠打企画率(SHA%)を算出した。

 数字としては表のとおりだが、基本的にセ・リーグよりもパ・リーグの方がバントを多用するようである。また、成功率もパ・リーグの方が高い。もっとも、これはセ・リーグでは投手が犠打を試みる機会が多いからでもある(投手の打席を除いた成功率は後ほど紹介する)。

 犠打成功時の得点確率というのは、犠打成功後のイニング内で得点できたかどうかということであり、この得点というのはタイムリーのみではなく相手のエラーや本塁打なども含まれる。ここでもパ・リーグの方がやや得点確率が高いようだ。

 次にチーム別の数値を確認する。

■ チーム別データ
2018年 チーム 犠打成功率
TmLgSHA%SHBuHSH%R%
ソフトバンク
PL
35.0 %102986.0 %43.9 %
日本ハム
PL
26.6 %86285.4 %44.8 %
西武
PL
16.0 %48284.7 %46.9 %
ロッテ
PL
39.5 %108581.9 %52.3 %
楽天
PL
32.1 %76379.8 %42.1 %
オリックス
PL
40.6 %118476.3 %48.3 %
ヤクルト
CL
27.2 %109475.8 %48.6 %
阪神
CL
38.6 %108573.9 %46.8 %
広島
CL
31.1 %109173.8 %42.2 %
DeNA
CL
22.2 %71073.2 %48.6 %
中日
CL
22.4 %86469.2 %46.6 %
巨人
CL
30.0 %96466.2 %39.4 %
Glossary
SHA%: 犠打企画率
SH: 犠打
BuH: バント安打
SH%: 犠打成功率
R%: 得点確率

 成功率が最も高かったのはホークス。今年のホークスは強打のチームだったのだが、バントの企画率は高い。また、得点確率はリーグ平均よりも低かったようだ。もちろん100回とか50回の試行回数で高いの低いのを言ってもあまり意味はないと思うが、結果的にはバントを多用した割に得点確率は悪かったということになる。逆にバントの成功率が最も低かったのがジャイアンツ。ジャイアンツは成功率が低いだけでなく、得点確率も低かった。もしかすると、このあたりにも今年のジャイアンツに感じるもどかしさ(投打の成績のわりに勝てていない)の要因が表れているのかもしれない。

バント成功率ランキング

 ここでの犠打企画数とは、1アウト以下・走者あり状況でのバント数(犠打・バント安打・バントアウト)のこと。

2018年 犠打成功率 (犠打企画20以上)
NameTmLgSHA%SHBuHSH%R%
菊池涼介
CL
41.5 %300100.0 %56.7 %
中村悠平
CL
70.6 %22095.7 %31.8 %
今宮健太
PL
65.0 %22095.7 %31.8 %
上林誠知
PL
40.0 %17395.2 %45.0 %
京田陽太
CL
33.3 %26092.9 %46.2 %
中島卓也
PL
94.1 %22192.0 %39.1 %
梅野隆太郎
CL
81.8 %28090.3 %37.0 %
福田周平
PL
56.3 %16285.7 %61.1 %
大城滉二
PL
68.4 %20184.0 %33.3 %
藤岡裕大
PL
50.0 %26083.9 %57.7 %
NameTmLgSHA%SHBuHSH%R%
清水優心
PL
92.3 %20083.3 %42.1 %
甲斐拓也
PL
87.5 %23182.8 %28.6 %
西浦直亨
CL
32.1 %20080.0 %75.0 %
安達了一
PL
64.7 %16080.0 %53.3 %
若月健矢
PL
83.3 %23079.3 %39.1 %
植田海
CL
80.0 %18375.0 %61.9 %
小林誠司
CL
62.5 %16061.5 %56.3 %
Glossary
SHA%: 犠打企画率
SH: 犠打
BuH: バント安打
SH%: 犠打成功率
R%: 得点確率

バントは得点確率を上昇させたか

犠打状況時の得点確率と得点期待値
SeasonR%RE
201541.6 %0.83
201642.4 %0.84
201742.6 %0.86
201844.1 %0.91
Glossary
R%: 得点確率
RE: 得点期待値
犠打成功時の得点確率と平均得点
SeasonR%RE
201544.9 %0.80
201642.7 %0.76
201745.4 %0.81
201846.0 %0.83
Glossary
R%: 得点確率
RE: 得点期待値

 上の表(犠打状況時の得点確率と得点期待値)は、犠打が試みられたアウトカウントと塁状況の頻度で各状況の得点確率と得点期待値(RE24)を重み付けし、犠打が試みられた状況における平均的な得点確率と得点期待値を算出したもの。これに対し下の表は実際に犠打が成功した際の得点確率と平均得点をまとめたものである。

 この二つの表を比較して分かるのは、犠打成功時には、得点確率が若干上昇し、得点期待値は下がるということだろう。つまり、バントとは得点期待値を犠牲にして得点確率を高める作戦ということになるのだが、注意しておかなければならないのは、これはあくまでも”バントが成功した時”の数値だという点だ。失敗したケースまで含めるとバントは得点確率も得点期待値も下げる。

犠打選択時の得点確率と平均得点
SeasonR%RE
201540.3 %0.74
201639.4 %0.72
201740.9 %0.75
201842.4 %0.80
Glossary
R%: 得点確率
RE: 得点期待値

 これがバントを失敗したケースまで含めた得点確率と得点期待値であり、平均的な得点確率と得点期待値と比較して数値が下がっているのがわかる。

 もちろんこれらは平均値をいっているだけであり、バント自体はケースバイケースで行えば良いだけのことではあるが、成功率や得点確率を顧みることなく無批判にバントを多用することは避けた方が良いだろう。

投手の打席を除くバント成功率

 最後に投手の打席を除いたバントの成功率等を見ておこう。セ・リーグの場合、どうしても投手の"でもしか"バントが発生してしまうため、投手の打席を含めるかどうかで成功率や企画率に差が出てくる。

■ リーグ平均
2018年 投手の打席を除く犠打成功率
LgSHA%SHBuHSH%R%
セ・リーグ24.9 %4151778.1 %48.0 %
パ・リーグ31.0 %5232582.7 %47.0 %
Glossary
SHA%: 犠打企画率
SH: 犠打
BuH: バント安打
SH%: 犠打成功率
R%: 得点確率
■ チーム別データ
2018年 チーム 投手の打席を除く犠打成功率
TmLgSHA%SHBuHSH%R%
西武
PL
15.1 %45290.4 %47.8 %
広島
CL
25.7 %77188.6 %46.8 %
ソフトバンク
PL
35.0 %101985.9 %44.3 %
日本ハム
PL
26.3 %84285.1 %44.7 %
ロッテ
PL
39.2 %103582.4 %52.3 %
楽天
PL
31.4 %74381.9 %41.9 %
ヤクルト
CL
24.5 %83480.6 %53.5 %
中日
CL
17.7 %62478.6 %51.6 %
阪神
CL
35.8 %85478.1 %48.3 %
オリックス
PL
40.0 %116476.4 %49.2 %
DeNA
CL
17.8 %47073.4 %52.2 %
巨人
CL
27.4 %61468.4 %35.4 %
Glossary
SHA%: 犠打企画率
SH: 犠打
BuH: バント安打
SH%: 犠打成功率
R%: 得点確率