カウントによる打撃成績の変化とストライクを増やす価値

 通常、ストライクカウントが先行すれば投手優位とされるし、ボールカウントが先行すれば打者優位とされる。

 ボールカウントとストライクカウントが進行していくにつれて、どの程度打率などの成績が変化していくのか実際に確認してみようと思う。

カウントによる打撃成績の変化

 以下の表は2015年から2017年までのカウントによる打撃成績の変化をまとめたもの。

 そのカウントで打席結果があった際の成績だけではなく、そのカウントを経過した全ての打席が含まれる。つまり、カウント0-0は3年間で計測した全ての打席が含まれる。言い換えれば、これがこの3年間の両リーグあわせた打者の平均値でもある。

2015年-2017年 カウントによる打撃成績の変化
B-SAVGOBPSLGOPSBB%K%HR%ISOBABIPGB%HR/FBwOBA
0-0
.253.321.376.6978.3 %19.2 %2.1 %.123.29849.4 %6.9 %.321
0-1
.225.269.318.5874.9 %26.6 %1.5 %.093.29651.4 %5.6 %.272
0-2
.169.199.226.4252.9 %41.8 %0.9 %.057.28654.7 %4.4 %.200
1-0
.268.378.413.79114.2 %15.6 %2.5 %.144.30147.2 %7.9 %.363
1-1
.238.307.346.6538.5 %23.3 %1.8 %.108.30049.5 %6.4 %.303
1-2
.185.230.253.4835.0 %37.8 %1.1 %.068.29452.8 %4.9 %.227
2-0
.288.508.463.97129.8 %11.6 %2.6 %.175.31345.3 %9.6 %.442
2-1
.255.392.384.77618.0 %18.5 %2.0 %.129.30647.6 %7.4 %.362
2-2
.202.295.283.57811.1 %32.1 %1.2 %.081.30150.5 %5.5 %.275
3-0
.294.754.4751.22863.7 %6.1 %1.4 %.180.32043.9 %9.6 %.561
3-1
.275.597.4391.03644.3 %11.1 %1.9 %.164.31245.2 %9.4 %.482
3-2
.222.460.323.78330.4 %22.9 %1.3 %.101.31148.6 %6.7 %.381
Glossary
B-S: ボール-ストライク
AVG: 打率
OBP: 出塁率
SLG: 長打率
OPS: 出塁率+長打率
BB%: 打席あたりの四球率
K%: 打席あたりの奪三振
HR%: 打席あたりの本塁打
ISO: 長打率−打率
BABIP: インプレー打球あたりの打率
GB%: ゴロ率
HR/FB: フライ打球あたりの本塁打
wOBA: 総合的な打撃成績


 この表の意味するところとしては、平均的な打者(というのがいたとして)が打席に入った際もっている打率の期待値は.253である。それが0ボール1ストライクになると.225に下がり、さらにストライクが増え0ボール2ストライクになると打率の期待値は.169まで下がる。

 逆にボールが先行していって2ボール0ストライクになれば打率の期待値は.288に上がり、OPSは強打者級の.971まで上昇する。
 特にボール先行カウントになるとHR%・BABIP・HR/FB%が上昇し、打者側が強くスイングしやすいカウントであることがうかがえる。

 このようにカウントをブレークダウンして見ていくことで、そのカウントでの平均的な期待値がわかる。

 基本的に打者側はストライクが増えるごとに期待値が下がり、ボールが増えるごとに期待値が増す。

ストライクを増やすことの得点価値
2015年-2017年 ストライク・ボールの得点価値
B-SPwOBAStrikeBallValue
0-0
138,904.321-.038.032.069
0-1
53,889.272-.055.023.079
0-2
23,715.200-.154.021.174
1-0
46,822.363-.046.061.107
1-1
38,395.303-.058.045.103
1-2
30,363.227-.174.037.211
2-0
16,895.442-.061.091.152
2-1
17,309.362-.067.092.159
2-2
19,744.275-.211.081.292
3-0
7,983.561-.060.093.153
3-1
8,493.482-.078.153.231
3-2
9,276.381-.292.231.523
Glossary
B-S: ボール-ストライク
P: 投球数
wOBA: 総合的な打撃成績
Strike: ストライク
Ball: ボール
Value: 得点価値


 先ほどの表で見たようにストライクやボールのカウントの増減によって打撃の期待値は変化する。それをwOBAでまとめたのが上記の表になる。

 例えば、カウント0-0からストライクカウントが増えて0-1に変化することでwOBAは.321から.272に推移する。これを得点価値に直すと、(.272-.321)÷wOBAの補正値で-.038となる。0-0からボールカウントが増えて1-0になった場合は、(.363-.321)÷wOBAの補正値で+.032。つまり投手側からみた場合、0-0のカウントからボールカウントの換わりにストライクカウントが一つ増えた場合の得点価値は.069となる。

 表中のPは打者がスイングせずに見逃してストライクもしくはボールになった投球数だが、これによって得点価値を重み付けし、ボールの換わりにストライクを一つ増やした時の平均的な得点価値を計算する。

 計算の結果、ボールの換わりにストライクを一つ増やした時の平均的な得点価値は.127となる。

 ちなみに、以前書いたフレーミングの記事では、上記のストライクを増やした得点価値をフレーミングによる利得として利用している。

ahoudata.hatenadiary.jp

カウント別 Plate Discipline
2015年-2017年 カウント別 Plate Dscipline
B-SPO-Swing%Z-Swing%Swing%O-Contact%Z-Contact%Contact%Zone%SwStr%
0-0
195,96713.7 %42.7 %28.7 %50.0 %86.5 %78.1 %51.8 %6.3 %
0-1
92,31921.6 %69.7 %41.2 %52.6 %88.1 %77.0 %40.7 %9.5 %
0-2
42,20929.3 %85.5 %43.4 %62.1 %87.0 %74.4 %25.1 %11.1 %
1-0
81,05521.6 %56.8 %41.9 %53.3 %87.8 %80.3 %57.5 %8.3 %
1-1
82,70229.6 %75.6 %53.2 %54.3 %88.3 %79.0 %51.3 %11.1 %
1-2
78,45841.7 %90.5 %60.9 %63.7 %88.2 %78.0 %39.2 %13.4 %
2-0
26,79517.4 %49.4 %36.7 %54.7 %88.1 %81.8 %60.3 %6.7 %
2-1
41,76331.4 %77.3 %58.3 %57.3 %88.4 %81.5 %58.7 %10.8 %
2-2
66,73047.9 %92.8 %70.0 %66.6 %89.1 %81.3 %49.2 %13.1 %
3-0
8,7493.3 %12.5 %8.7 %55.0 %89.3 %83.9 %58.4 %1.4 %
3-1
16,66023.3 %64.5 %48.9 %64.2 %90.1 %85.5 %62.1 %7.1 %
3-2
37,58649.1 %93.2 %75.1 %69.0 %90.4 %84.7 %59.0 %11.5 %
Glossary
B-S: ボール-ストライク
P: 投球数
O-Swing%: ボールゾーンスイング率
Z-Swing%: ストライクゾーンスイング率
Swing%: スイング率
O-Contact%: ボールゾーンコンタクト率
Z-Contact%: ストライクゾーンコンタクト率
Contact%: コンタクト率
Zone%: ストライクゾーン率
SwStr%: 空振り率


 先ほどまで見てきた『カウントによる打撃成績の変化』とは異なり、上記の表はそのカウントでの結果をまとめたもの。

 傾向としては、ストライクカウントが増えるとボールゾーンスイング率(O-Swing%)が上昇するというのが見てとれる。例外的に思えるのが0-2のカウントで、これはおそらく0ボール2ストライクのカウントでは投手側が”一球外す”ことが多いからではないだろうか。その証左として、Zone%(ストライクゾーンに投げた割合)が極端に低くなっている。

 逆に2-0のカウントと2-1のカウントを比較して、2-0のカウントでは打者側が"一球待つ"という現象がありそうだ。

強打者のカウントによる打撃成績の変化

 2015年から2017年までのwRC+上位3人をピックアップした(1000打席以上)。

柳田悠岐
2015年-2017年 柳田悠岐* カウントによる打撃成績の変化
B-SPAAVGOBPSLGOPSBB%K%HR%ISOBABIPGB%HR/FBwOBA
0-0
1,692.328.448.5841.03215.7 %19.1 %4.9 %.256.37650.8 %19.4 %.456
0-1
713.276.366.474.84011.2 %29.0 %3.8 %.197.37254.0 %17.9 %.388
0-2
240.191.242.289.5316.3 %48.3 %1.7 %.098.37157.8 %11.4 %.251
1-0
747.359.535.6541.19025.0 %15.6 %5.3 %.295.39646.1 %21.0 %.507
1-1
765.305.435.526.96117.8 %22.7 %3.9 %.221.38151.9 %17.4 %.434
1-2
472.229.335.337.67213.6 %38.6 %1.5 %.108.39459.6 %10.0 %.315
2-0
262.341.660.6291.28945.2 %12.5 %3.6 %.288.38347.6 %22.0 %.543
2-1
458.303.509.5111.02028.4 %18.3 %3.1 %.207.37350.2 %14.9 %.465
2-2
480.238.404.361.76521.5 %33.1 %1.7 %.123.38953.2 %9.8 %.358
3-0
98.333.898.6671.56582.1 %7.1 %1.2 %.333.50055.6 %50.0 %.638
3-1
202.278.743.5971.34063.9 %10.9 %2.5 %.319.33342.0 %22.7 %.585
3-2
321.235.595.312.90746.7 %21.2 %0.0 %.076.39258.8 %0.0 %.460
Glossary
B-S: ボール-ストライク
PA: 打席
AVG: 打率
OBP: 出塁率
SLG: 長打率
OPS: 出塁率+長打率
BB%: 打席あたりの四球率
K%: 打席あたりの奪三振
HR%: 打席あたりの本塁打
ISO: 長打率−打率
BABIP: インプレー打球あたりの打率
GB%: ゴロ率
HR/FB: フライ打球あたりの本塁打
wOBA: 総合的な打撃成績


筒香嘉智
2015年-2017年 筒香嘉智* カウントによる打撃成績の変化
B-SPAAVGOBPSLGOPSBB%K%HR%ISOBABIPGB%HR/FBwOBA
0-0
1,730.307.408.569.97814.1 %18.4 %5.6 %.262.33536.6 %15.3 %.429
0-1
780.266.340.459.7999.6 %27.2 %4.2 %.193.33638.2 %13.2 %.359
0-2
237.252.312.463.7767.6 %39.2 %5.5 %.211.37544.0 %21.0 %.354
1-0
789.327.474.6241.09821.5 %13.5 %5.6 %.296.33536.5 %15.6 %.475
1-1
821.282.385.479.86414.3 %24.8 %4.0 %.197.35337.3 %13.4 %.384
1-2
501.215.299.367.66610.8 %38.1 %3.2 %.152.33342.2 %13.3 %.306
2-0
287.370.620.7341.35438.5 %7.4 %5.3 %.364.35839.5 %18.8 %.567
2-1
464.299.472.5341.00624.6 %19.8 %4.3 %.236.35435.0 %14.4 %.446
2-2
510.220.355.348.70317.1 %33.5 %1.8 %.128.34742.2 %7.7 %.329
3-0
119.421.815.8161.63166.1 %7.0 %2.6 %.395.48136.7 %17.6 %.636
3-1
217.309.650.6731.32248.8 %13.4 %5.1 %.364.32937.0 %25.0 %.553
3-2
359.232.513.364.87735.9 %24.8 %1.7 %.132.35336.7 %8.6 %.417
Glossary
B-S: ボール-ストライク
PA: 打席
AVG: 打率
OBP: 出塁率
SLG: 長打率
OPS: 出塁率+長打率
BB%: 打席あたりの四球率
K%: 打席あたりの奪三振
HR%: 打席あたりの本塁打
ISO: 長打率−打率
BABIP: インプレー打球あたりの打率
GB%: ゴロ率
HR/FB: フライ打球あたりの本塁打
wOBA: 総合的な打撃成績


鈴木誠也
2015年-2017年 鈴木誠也 カウントによる打撃成績の変化
B-SPAAVGOBPSLGOPSBB%K%HR%ISOBABIPGB%HR/FBwOBA
0-0
1,278.310.384.547.93110.3 %15.5 %4.7 %.237.32837.7 %11.8 %.415
0-1
555.296.338.485.8246.0 %22.6 %3.3 %.189.35740.0 %9.0 %.372
0-2
169.247.284.418.7024.7 %36.1 %3.6 %.171.35538.4 %11.8 %.319
1-0
614.327.434.6071.04115.9 %11.8 %5.7 %.280.32236.0 %13.9 %.454
1-1
561.271.339.441.7809.1 %22.1 %2.7 %.170.33039.7 %7.5 %.355
1-2
369.232.285.376.6616.5 %35.2 %3.0 %.144.33741.3 %10.1 %.306
2-0
233.440.609.9311.54030.6 %5.2 %9.5 %.491.37830.9 %23.7 %.626
2-1
333.317.440.6161.05518.1 %13.0 %6.0 %.299.31335.4 %15.6 %.465
2-2
339.269.357.414.77111.8 %25.4 %2.4 %.145.35338.2 %7.3 %.358
3-0
73.440.795.6401.43563.9 %4.2 %1.4 %.200.45543.5 %7.7 %.600
3-1
145.312.621.6361.25745.5 %7.6 %4.1 %.325.29027.9 %13.6 %.536
3-2
194.241.479.391.87031.4 %21.1 %2.1 %.150.31834.8 %7.7 %.413
Glossary
B-S: ボール-ストライク
PA: 打席
AVG: 打率
OBP: 出塁率
SLG: 長打率
OPS: 出塁率+長打率
BB%: 打席あたりの四球率
K%: 打席あたりの奪三振
HR%: 打席あたりの本塁打
ISO: 長打率−打率
BABIP: インプレー打球あたりの打率
GB%: ゴロ率
HR/FB: フライ打球あたりの本塁打
wOBA: 総合的な打撃成績


 筒香と鈴木の0-2カウントと1-2カウントを比較した場合、1-2カウントの方がwOBAが低くなっている。これは0-2カウントの打席数が少ないので単なる偶然である可能性も高いが、もしかするとある種の打者に対しては先ほどカウント別PlateDisciplineで見た”一球外す”投球が有効である可能性もないこともないのかもしれない。