捕手のフレーミングおよび盗塁阻止

フレーミング

 MLBで行われているようなトラッキングシステムのデータを使った正確なものはできないが、簡易的な方法で似たようなものができないか試しに作ってみた。
 もっとも今回の方法では投手の能力と切り分けもできないし、そういう可能性もあるのかな程度ではあるのだが、技術に対する主観的な判断と照らし合わせる上では参考になるかもしれない。

計算方法

f:id:verdoux:20180106010148p:plain:w180

 計算方法としては例えば、図の11と12を一つのグループとみなし、グループごとの投球に対するストライクの割合を計算する。このストライクの割合をリーグ平均と比較し、いくつストライクを多くとれたかを算出し、ストライクを一つ増やすことの得点価値(約0.13)を掛け合わせ、全てのグループを合計してフレーミングによって稼いだ利得とした。

 以下は、2015年から2017年までの3シーズンで1000イニング以上捕手として守備についた選手を対象に順位付けを行った。

2015-2017年 1000イニング以上 捕手フレーミングランキング

※ フレーミングによる利得 / 守備イニング
※ 10000Pは10000球あたりのフレーミングによる利得

No選手T2015201620172015-201710000P
1戸柱恭孝D- / -11.4 / 974.012.6 / 835.224.0 / 1809.213.2
2高谷裕亮3.6 / 534.05.0 / 251.13.0 / 541.111.6 / 1326.29.6
3梅野隆太郎2.6 / 331.15.9 / 248.14.1 / 813.012.6 / 1392.29.4
4小林誠司-2.7 / 516.22.7 / 1135.120.3 / 1113.220.3 / 2765.27.5
5杉山翔大2.8 / 417.06.5 / 763.01.0 / 235.210.2 / 1415.27.1
6若月健矢0.1 / 31.05.3 / 641.04.5 / 707.29.8 / 1379.27.0
7田村龍弘7.3 / 905.01.0 / 1020.1-1.1 / 903.17.2 / 2828.22.6
8鶴岡慎也2.7 / 383.0-2.5 / 634.00.9 / 64.11.1 / 1081.11.1
9伊藤光0.1 / 668.0-2.4 / 381.0-3.7 / 489.2-6.1 / 1538.2-3.9
10會澤翼2.4 / 666.0-1.2 / 483.1-10.3 / 765.0-9.0 / 1914.1-4.7
11炭谷銀仁朗西-1.8 / 1076.02.7 / 805.0-15.5 / 774.0-14.6 / 2655.0-5.5
12石原慶幸-1.4 / 617.1-7.1 / 717.0-1.4 / 418.0-9.8 / 1752.1-5.7
13大野奨太-6.4 / 449.1-5.7 / 842.2-3.7 / 456.0-15.8 / 1748.0-9.6
14嶋基宏-9.2 / 969.2-9.2 / 625.0-12.4 / 897.2-30.8 / 2492.1-12.5
15中村悠平-13.4 / 1172.2-22.5 / 876.0-11.1 / 1079.2-47.0 / 3128.1-15.1
16市川友也-5.9 / 290.2-4.0 / 406.0-13.0 / 383.0-22.9 / 1079.2-23.0

 今回の計算ではベイスターズの戸柱がもっともフレーミングによって利得を稼いだ捕手ということになった。2015年から2017年までの利得、24.0点というのはフレーミングによって約184個ほどストライクを増やしたということになる。もちろん、あくまでそういう可能性があるという程度のことだが。

 チーム別ランキングも出してみた。

2015-2017年 チーム別ランキング

NoLgチーム2015201620172015-201710000P
1CLDeNA12.915.924.152.913.8
2CL阪神3.819.114.237.110.2
3PLソフトバンク6.43.717.527.67.7
4CL中日10.68.1-1.617.24.4
5PLロッテ14.0-1.63.115.54.1
6CL巨人-5.7-0.718.111.63.1
7PLオリックス1.62.60.75.01.3
8CL広島0.7-6.5-11.8-17.6-4.6
9PL西武-6.24.5-23.2-25.0-6.5
10PL楽天-5.4-14.0-16.1-35.5-9.4
11CLヤクルト-13.4-21.3-10.4-45.1-11.9
12PL日本ハム-19.4-9.8-14.6-43.7-12.2

盗塁阻止

 wSBによって捕手の盗塁阻止あるいは抑止といったところの評価を行ってみる。wSB(リンク)とは打者の盗塁を評価するための指標であるが、これを捕手側から見てみる。

 通常、捕手の盗塁阻止率は盗塁+盗塁刺を機会として盗塁刺の割合を示すものだが、ここには捕手の肩を警戒するなどして"走らなかった"ケースは含まれない。wSBの場合、機会は単打+四球+死球-故意四球と一塁へ許した出塁数になっている。これにより走られなかったことも評価に含めることができる。

 また、予め断っておくと今回のデータでは盗塁、盗塁刺とも全体の約4%ほどは集計できていない。ざっくりしたものとして見ていただければと思う。

 以下は、フレーミングと同じく、2015年から2017年までの3シーズンで1000イニング以上捕手として守備についた選手を対象に順位付けを行った。

2015-2017年 1000イニング以上 捕手wSBランキング

※ wSB / 守備イニング
※ 1000Innは1000イニングあたりのwSB

No選手T2015201620172015-20171000Inn
1田村龍弘5.9 / 905.02.1 / 1020.12.1 / 903.110.0 / 2828.23.5
2小林誠司2.0 / 516.23.2 / 1135.12.5 / 1113.27.7 / 2765.22.8
3市川友也0.9 / 290.22.7 / 406.0-0.8 / 383.02.8 / 1079.22.6
4炭谷銀仁朗西2.5 / 1076.00.7 / 805.02.0 / 774.05.1 / 2655.01.9
5杉山翔大1.3 / 417.00.0 / 763.01.0 / 235.22.2 / 1415.21.6
6若月健矢-0.2 / 31.00.9 / 641.01.1 / 707.21.9 / 1379.21.3
7高谷裕亮4.7 / 534.00.3 / 251.1-3.2 / 541.11.7 / 1326.21.3
8戸柱恭孝D- / --1.1 / 974.02.3 / 835.21.2 / 1809.20.7
9中村悠平0.9 / 1172.2-0.5 / 876.01.5 / 1079.21.9 / 3128.10.6
10石原慶幸0.2 / 617.11.7 / 717.0-1.2 / 418.00.7 / 1752.10.4
11伊藤光-1.5 / 668.00.6 / 381.01.2 / 489.20.3 / 1538.20.2
12會澤翼2.2 / 666.0-1.0 / 483.1-0.9 / 765.00.3 / 1914.10.2
13梅野隆太郎-1.6 / 331.1-0.7 / 248.12.3 / 813.00.0 / 1392.20.0
14大野奨太0.2 / 449.11.4 / 842.2-4.4 / 456.0-2.8 / 1748.0-1.6
15嶋基宏-4.0 / 969.2-2.7 / 625.00.2 / 897.2-6.5 / 2492.1-2.6
16鶴岡慎也-3.1 / 383.0-5.4 / 634.0-0.7 / 64.1-9.2 / 1081.1-8.5

 ランキングとしては以上だが、これも先ほどのフレーミングと同じで投手の能力は加味されていないので、どこまでが捕手の能力なのかという疑問が残るだろう。とはいえ、実際のプレーを見る上で一つの参考程度にはなるのではないかと思う。