ペナントレース振り返り パ・リーグ(2017)
パ・リーグは2年ぶりにホークスが優勝。
評論家の予想は一位ホークス、二位ファイターズというのが多かったように思う。その点では、ホークスの優勝は順当なものだったし、逆に昨年日本一のファイターズがシーズン序盤から低迷してそのまま再建モードに突入というのは予想外の結果といえるだろう。
貯金と得失点差の推移
2017年貯金推移
2016年貯金推移
2017年得失点差推移
2016年得失点差推移
昨年はホークスの独走から後半ファイターズが猛追して追い抜くという展開だったが、今年は序盤から首位のイーグルスをホークスが追う展開。後半、イーグルスの息切れとともに一気に追い抜き、引き離した。
得失点差ベースでは、ホークスとライオンズは競った状態だったのだが、勝敗の面ではかなり差がついた。
こうしてみると昨年も優勝こそ逃したが勝敗や得失点の面では安定しており、どのチームがホークスの牙城に挑むのかというのが、ここ数年のペナントレースのテーマなのかもしれない。
勝敗および得失点
RDは得失点差、xW%は得失点からみた期待勝率。
2017年
チーム | W | L | D | W% | RS9 | RA9 | RD | xW% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 94 | 49 | 0 | .657 | 4.58 | 3.41 | 155 | .624 |
西武 | 79 | 61 | 3 | .564 | 4.93 | 3.97 | 130 | .596 |
楽天 | 77 | 63 | 3 | .550 | 4.14 | 3.71 | 57 | .546 |
オリックス | 63 | 79 | 1 | .444 | 3.78 | 4.22 | -59 | .453 |
日本ハム | 60 | 83 | 0 | .420 | 3.59 | 4.23 | -87 | .430 |
ロッテ | 54 | 87 | 2 | .383 | 3.36 | 4.60 | -168 | .368 |
2016年
チーム | W | L | D | W% | RS9 | RA9 | RD | xW% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本ハム | 87 | 53 | 3 | .621 | 4.38 | 3.27 | 152 | .620 |
ソフトバンク | 83 | 54 | 6 | .606 | 4.50 | 3.34 | 158 | .625 |
ロッテ | 72 | 68 | 3 | .514 | 4.08 | 4.06 | 1 | .502 |
西武 | 64 | 76 | 3 | .457 | 4.36 | 4.38 | 1 | .499 |
楽天 | 62 | 78 | 3 | .443 | 3.81 | 4.60 | -110 | .418 |
オリックス | 57 | 83 | 3 | .407 | 3.50 | 4.50 | -136 | .394 |
得点力ではライオンズだが、ホークスはディフェンス面が優れていた。得失点差でみれば昨年とほぼ同じで、戦力的には同等だったと思われるが、追いかけるチーム(イーグルス、ライオンズ)に、昨年のファイターズほどの爆発力がなかったということだろう。
ライオンズは得失点差からみればもう少し勝てていても良さそうな感じではある。昨年に比べると得点力があがりディフェンス力も向上した。
イーグルスも得点、失点ともに向上した。得失点差では昨年から+167点の改善。
ファイターズはまさかの展開だった。得失点差でいえば、昨年から-239点である。
スタッツ
以下は各種スタッツをリーグ平均との比較から得点換算したもの。
打撃はwOBA、走塁は盗塁やエクストラの進塁、投手はFIP、守備は打球種別のDERから得点換算した。合計が実際の得失点差とおよそ近似するもの、シーズンの戦力値と考えていただきたい。
2017年
チーム | 打撃 | 走塁 | 投手 | 守備 | Off | Def | 合計 | xW% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 70.7 | 0.8 | 23.8 | 30.2 | 71.4 | 54.0 | 125.4 | .597 |
西武 | 84.3 | 15.4 | 1.5 | 31.1 | 99.6 | 32.6 | 132.2 | .599 |
楽天 | 24.2 | -7.9 | 55.9 | -1.9 | 16.4 | 54.0 | 70.4 | .557 |
オリックス | -19.7 | -12.0 | 11.1 | -4.6 | -31.7 | 6.5 | -25.2 | .485 |
日本ハム | -57.7 | 1.3 | -36.7 | -16.3 | -56.4 | -53.0 | -109.4 | .422 |
ロッテ | -101.2 | 2.5 | -55.6 | -38.6 | -98.8 | -94.1 | -192.9 | .359 |
2016年
チーム | 打撃 | 走塁 | 投手 | 守備 | Off | Def | 合計 | xW% |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本ハム | 35.6 | 11.7 | 27.9 | 68.3 | 47.3 | 96.2 | 143.6 | .619 |
ソフトバンク | 43.3 | 8.5 | 26.3 | 49.1 | 51.7 | 75.3 | 127.1 | .605 |
ロッテ | -35.5 | -5.0 | -15.5 | -21.3 | -40.6 | -36.7 | -77.3 | .452 |
西武 | 44.0 | -2.2 | -2.2 | -29.9 | 41.8 | -32.0 | 9.7 | .515 |
楽天 | -22.3 | -9.7 | 1.9 | -56.0 | -32.0 | -54.1 | -86.1 | .446 |
オリックス | -65.3 | -3.2 | -38.5 | -10.3 | -68.5 | -48.7 | -117.3 | .421 |
先ほど得失点でもみたとおりホークスは戦力的には昨シーズンとほぼ同じ。そして、ライオンズはそのホークスに戦力値ではやや上回ってさえいる。繰り返しになるが、もう少し競った展開になっていても不思議ではなかった。
ライオンズの昨シーズンからの上積みで大きかったのは、守備力が向上したことだろう。
イーグルスはデルタのUZRだとここに挙げた守備の数値よりもはるかに悪く、来シーズンは守備力が課題になると思われる。
バファローズは全体的に上向き、ファイターズは立て直し期間に入った。
マリーンズは昨年、順位こそ3位だったが内容は悪く、今年のこの結果も想定できないわけではなかった。
ポジション別の収支および予測値との比較
- wRAAは各ポジションごとのリーグ平均との比較。
- パークファクターで補正した数値。
- SPは先発投手、RPはリリーフ投手。
- UZRはデルタのサイトを参照した。(リンク)
- 上段が実績値、下段が予測値。
ソフトバンク
- 実績
- Off: 89.7 (91.1 / -1.4), Def: 71.2 (35.6 / 35.6), 合計: 161
- 予測
- Off: 60.9 (58.9 / 1.9), Def: 52.5 (38.9 / 13.5), 合計: 113.3
全体的に予測値に比べて少しずつ良かったというのもあるが、中でも大きいのはショートの今宮の活躍と、ブルペン陣の奮闘ではないかと思う。
西武
- 実績
- Off: 78.2 (60.5 / 17.7), Def: 63.4 (25.5 / 37.9), 合計: 141.6
- 予測
- Off: 29.7 (25.5 / 4.2), Def: -25.2 (-27.6 / 2.4), 合計: 4.5
予測値と見比べて大きいのがファースト、ショート、先発投手ということになるだろう。
ファーストは山川。山川はファームの成績からいってもそろそろブレイクするころではあったが、予想をはるかに上回る成績だった。
ショートの新人、源田は守備力の面でチームにアドバンテージをもたらした。
先発投手で大きかったのが、菊池と野上。それとこの二人ほどではないが十亀も良い働きをした。
楽天
- 実績
- Off: -9.4 (10.3 / -19.7), Def: 37.3 (62.6 / -25.3), 合計: 27.8
- 予測
- Off: -32.9 (-25.8 / -7.1), Def: -0.8 (27.5 / -28.3), 合計: -33.7
打線が非常に活性化したということと、先発投手はもともと高い予測値だったのだが実際の成績ではそれを上回った。
打線でいえば、茂木、ウィーラー、ペゲーロだが、島内も予想からすればとても良い働きをした。
先発投手陣は誰か特定の選手というよりは皆が良かった。スタッツ的には則本が図抜けているのではあるが、移籍してきた岸も他チームなら当然エース格だし、あるいは美馬や辛島といったところも平均よりは上の投手である。なので、現状イーグルスはエース級が2枚に平均以上の先発が複数枚というリーグでも屈指のローテーションを有しており、そこに安樂や藤平など次世代のエース級が期待される若手も控えているという、投手的にはもっとも充実した時期が来ているのではないかと思う。
オリックス
- 実績
- Off: -37.5 (-34.5 / -3), Def: -20.4 (4.1 / -24.5), 合計: -57.9
- 予測
- Off: -41.6 (-37.5 / -4), Def: 2.2 (-6.5 / 8.7), 合計: -39.4
日本ハム
- 実績
- Off: -46.7 (-51.4 / 4.7), Def: -30.3 (-34.9 / 4.6), 合計: -77
- 予測
- Off: 23 (20.2 / 2.8), Def: 30.4 (6 / 24.4), 合計: 53.4
捕手では清水、内野では石井一成、外野では松本剛ら若い選手が積極的に起用された。
WAR基準で考えれば、大谷一人で控え選手に比べて8~10勝多く稼いでくれるわけで、もちろん今年の成績に10勝プラスしたところで優勝できるわけではないが、勝率4割少々のチームを5割に引き上げるくらいの力は持っているということになる。
ロッテ
- 実績
- Off: -77.5 (-79.2 / 1.7), Def: -132 (-103.7 / -28.3), 合計: -209.4
- 予測
- Off: -39.1 (-41.2 / 2.1), Def: -59.1 (-38.3 / -20.7), 合計: -98.2
予測値と見比べるとわかるように、予測値の時点でかなり悪いのである。これが実際には−1.5~2倍くらいになった。
マリーンズは昨年も一昨年も戦力のわりによく勝つチームで、今年もスタッツからみれば勝っているほうなのだが、さすがに今年は戦力値が低すぎた。采配なのか運なのかは分からないが、+αの要素ではどうにもならない戦力だったということだ。