ペナントレース振り返り セ・リーグ(2017)

 セ・リーグは昨年に続きカープが連覇。
 黒田博樹の引退によって投手力の低下が懸念されたが、若手投手の台頭と圧倒的な得点力でカバーされ、昨年と同様にほぼ独走といって良いリーグ制覇だった。

貯金と得失点差の推移

2017年 貯金推移

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2016年 貯金推移

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2017年 得失点差推移

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2016年 得失点差推移

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 ペナントレースの展開としては昨年とほぼ同じで、交流戦あたりから他チームとの差が一気に開いていく格好となった。8月にやや停滞した時期があったものの、全体として安定した戦いぶりだったといって良いだろう。
 昨年との比較でいえば、タイガースが一貫して勝率5割以上をキープしたこと、スワローズが昨年以上に大きく低迷してしまったことがあげられる。また、昨シーズンはカープ以外の5チームは全て得失点差がマイナスだったのだが、今年はスワローズとドラゴンズ以外はプラスとなった。優勝チームが独走したという状況は変わらないものの、各チームのコントラストがはっきりとしたシーズンだったかもしれない。

勝敗および得失点

 RDは得失点差、xW%は得失点からみた期待勝率。

2017年

チームWLDW%RS9RA9RDxW%
広島88514.6335.223.77196.645
阪神78614.5614.153.7061.548
DeNA73655.5294.194.19-1.501
巨人72683.5143.793.5532.526
中日59795.4283.404.38-136.394
ヤクルト45962.3193.314.66-180.356

2016年

チームWLDW%RS9RA9RDxW%
広島89522.6314.863.48187.643
巨人71693.5073.653.81-24.482
DeNA69713.4934.034.15-16.487
阪神64763.4573.563.86-40.467
ヤクルト64781.4514.214.95-100.426
中日58823.4143.484.02-73.440

 カープは勝率でみても得失点差でみても昨年とほぼ同等の成績。特筆すべきはその得点力の高さだろう。平均得点(9イニングあたり、RS9)は5点を超え、2番目に高いタイガースに1点以上の差をつけている。得点力は昨シーズンももちろん高く、平均得点としては統一球導入以降では最高だったのだが、今年はそれをさらに更新した。

 ジャイアンツは昨年と同様に得点力不足に苦しんだものの、得失点差は昨年の-24から+32まで回復させることができた。

 タイガースは得点力を大幅に改善させた。平均得点はおよそ0.5点上昇。失点率も減少しており、得失点差ベースでは昨年比で最も上積みを作ることが出来たチームだった。

スタッツ

 以下は各種スタッツをリーグ平均との比較から得点換算したもの。
 打撃はwOBA、走塁は盗塁やエクストラの進塁、投手はFIP、守備は打球種別のDERから得点換算した。合計が実際の得失点差とおよそ近似するもの、シーズンの戦力値と考えていただきたい。

2017年

チーム打撃走塁投手守備OffDef合計xW%
広島139.121.329.516.4160.445.8206.2.640
阪神15.63.068.2-60.818.67.426.0.515
DeNA1.5-3.9-12.717.5-2.44.82.4.498
巨人-7.8-12.134.723.1-19.957.837.9.526
中日-62.4-3.3-59.928.5-65.7-31.4-97.2.422
ヤクルト-86.0-5.0-59.7-24.6-91.0-84.3-175.3.365

2016年

チーム打撃走塁投手守備OffDef合計xW%
広島132.63.427.513.4136.040.9176.9.617
巨人-16.0-9.126.4-23.7-25.02.7-22.4.474
DeNA-9.22.5-5.110.8-6.85.8-1.0.490
阪神-72.19.748.9-11.1-62.437.7-24.7.471
ヤクルト33.6-4.6-88.2-4.929.0-93.1-64.1.447
中日-69.2-1.9-9.515.6-71.16.1-65.0.440

 カープは昨年もリーグ屈指の強力打線だったのだが、今年はそれをさらに上回った。加えて、走塁でも当ブログの集計では+20点の上乗せがあった。これは、それだけ追加の進塁(例えば、単打で2塁から生還するなど)を足で稼いだということなのだが、別の見方をすれば、それだけよく打線が繋がったということでもある。
 また、懸念された投手力もスタッツ(FIPからの得点換算値)的には昨年とほぼ同等の成績だった。守備ではデルタのUZRだと上に挙げた数字よりももう少し高く、ジョンソンや鈴木誠也の離脱があったにも関わらず、総合的には昨年よりも戦力的に上回っていたと言えるだろう。

 タイガースは打撃が大幅に改善された。およそ90点の改善である。
 一方、守備成績は悪化した。昨シーズンもUZRで見ればかなり悪かったのだが、今年はそれよりもさらに悪く、投手で稼いだ利得を全て守備ではき出すような形となっている。
 とはいうものの、この守備の悪さはここにあげた数値ほどは実際の失点率に反映されていない。これは、一つにはタイガース投手陣の奪三振の高さに関係があって(リーグで最も高い)、これが被出塁に対する失点の低さに繋がっている可能性がある。もちろん、残塁率は奪三振率だけでは説明できないので偶然の要素もあったと思うが、来季にむけて押さえておきたいポイントではある。

 ベイスターズは全体としては昨年並み。打撃がやや上昇、投手がやや下降。守備に関しては、デルタのUZRではここにあげた数字よりも良く、守備力がチーム成績(久しぶりに勝率5割以上を達成)を底上げしたと言えるのではないかと思う。

 ジャイアンツは昨年に比べて守備数値が改善した。また、打撃、投手も微妙にだが数値はあがった。トータルの戦力値としては+50以上の改善で、スタッツ的にはもう少し上の順位もあり得たと思われる。

 ドラゴンズは、打線はゲレーロが加入しそれなりの成績を残したが、全体としてはほとんど改善されなかった。また、投手陣は壊滅的で、スワローズを上回ったのはひとえに守備力の差が大きかったものと思われる。

 スワローズは投手は昨年に比べて随分上向いたのだが、打線というよりも守備も含めて野手陣が壊滅的となってしまった。

ポジション別の収支および予測値との比較

  • wRAAは各ポジションごとのリーグ平均との比較。
  • パークファクターで補正した数値。
  • SPは先発投手、RPはリリーフ投手。
  • UZRはデルタのサイトを参照した。(リンク
  • 上段が実績値、下段が予測値。

広島

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  • 実績
    • Off: 183.1 (158.4 / 24.7), Def: 55.2 (22.8 / 32.4), 合計: 238.3
  • 予測
    • Off: 53.7 (54 / -0.4), Def: 0.7 (-13.6 / 14.3), 合計: 54.3

 チームの総合的な成績はさきほど見たとおりで、戦力値としては昨年を上回ったといえる。
 全体的な傾向は予測値のとおりだったが、実際には予測値を1.5〜2倍にしたような形になった。
 その中で傾向としても予想外だったのが先発投手で、個々の投手の成績をみるとエース級といえるような投手はいないのだが平均並か平均よりやや上くらいの投手が集まっており、こういった投手陣でローテーションを回していけたのが好成績につながったと言える。

阪神

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  • 実績
    • Off: 41.8 (45.5 / -3.7), Def: -11.8 (41.2 / -53), 合計: 30
  • 予測
    • Off: -28.4 (-33.6 / 5.2), Def: -5.9 (13.5 / -19.4), 合計: -34.4

 タイガースの予測値に関しては、以前の記事で説明したようにポジションのコンバートが反映されていないため傾向としても実績値とはかなり異なる結果となっている。
 大きいのがサード(鳥谷のサードコンバート)と外野(糸井の加入)で、サードに関しては打力は向上したが守備力が大幅に低下した。外野は糸井の加入により全体的に攻撃力は増したが、守備面ではあまり成果があがらなかった。
 投手はリーグでも屈指の救援陣を要したが、先発は予測を大幅に下まわった。
 原因として大きいのが藤浪の不調である。その次が岩貞が昨年の投球から期待したほどのパフォーマンスを見せることができなかったこと。秋山は高クオリティーで良く投げ、予測よりも随分良かったのだが、この二人のマイナスを埋めるまでにはいたらなかった。

DeNA

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  • 実績
    • Off: -18.8 (-16 / -2.8), Def: 29.5 (3 / 26.5), 合計: 10.7
  • 予測
    • Off: -16.5 (-15.2 / -1.3), Def: -2.1 (5.7 / -7.8), 合計: -18.6

 全体的には予想どおりではあったが、宮﨑が良く打ち良く守ったということと、桑原が良く守ったということが予測値からみると大きな上積みではないかと思う。
 攻撃面でいえば、筒香は予想よりも打たなかったのだが、これを宮﨑とロペスが埋め合わせたということだ。
 投手陣は悪くはなかったのだが、クラインが戦力にならなかったのは大きな誤算ではあった。

巨人

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  • 実績
    • Off: -31.2 (-17.3 / -13.9), Def: 54.3 (45.4 / 8.9), 合計: 23.2
  • 予測
    • Off: 10.5 (13.3 / -2.8), Def: 16.3 (21.5 / -5.3), 合計: 26.8

 マギーをセカンドで起用したことが予想外の部分ではあったが、全体的な傾向は予想どおりではあった。おそらく、坂本がもう少し打って、陽岱鋼が離脱なしで出場できていれば攻撃力はもう少し向上していたはずである。
 先発投手は菅野、マイコラスという球界最高クラスの先発を2枚要したことで予測値を大幅に上回った。

中日

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  • 実績
    • Off: -42.9 (-37.9 / -5), Def: -69.4 (-88.7 / 19.3), 合計: -112.3
  • 予測
    • Off: -42.3 (-42 / -0.3), Def: 5.2 (-12.5 / 17.7), 合計: -37.1

ヤクルト

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  • 実績
    • Off: -138 (-138.7 / 0.7), Def: -49.8 (-15.7 / -34.1), 合計: -187.7
  • 予測
    • Off: 23 (23.5 / -0.5), Def: -14.1 (-14.6 / 0.5), 合計: 8.9

 山田は標準的なセカンドに比べればはるかに打っているのだが、予測値からみれば半分以下の働きだった。また、川端の稼働がゼロだったことや畠山の離脱も大きかったのだが、全体的に打てなさすぎたし守備も良くなかった。