一巡目と三巡目の打撃成績の違い

 一巡目、三巡目というのは、一回り目の打席と三回り目の打席のこと。イメージとしては、投手の消耗度合い、打者の慣れなどから一巡目よりも三巡目のほうが打撃成績が良くなりそうである。これを数値的にどのくらい違いがあるのかを示してみたい。

 データは2007年〜2017年までのNPBのデータで、先発投手登板時の打席のみを対象とした。

先発投手登板時の打席巡ごとの打撃成績(1)
TTOPABB%K%HR%ISOBABIPAVGOBPSLGOPS
1st
170,1747.6 %19.4 %2.0 %.115.296.250.314.364.678
2nd
163,9477.2 %17.5 %2.3 %.128.299.261.321.389.710
3rd
120,2307.3 %15.8 %2.4 %.136.307.274.333.410.743
4th
22,8457.0 %15.4 %1.9 %.119.308.273.331.392.723
5th
3146.3 %10.6 %1.0 %.121.341.310.370.431.801

 まず、打席数(PA)を見てもらうと分かるとおり、平均的には三巡目までで、四巡目以降は例外的な打席と言える。想像するに四巡目以降というのは、主には投手がよほど好投していた時で、それ以外では、特に、五巡目までいくパターンというのは序盤から打ち込まれて致し方なく続投させられている時ではないかと思う。

 さて、数値を見て分かるとおり、一巡目から二巡目、二巡目から三巡目と進むにつれて打撃成績は上がっていく。OPSでみると、.678→.710→.743と上昇していく。今回のデータの平均OPSが.708ということを踏まえると三巡目のOPS.743は平均比で1.05倍、一巡目のOPSと比較すると約1.1倍。その他、三巡目の方が、三振はしづらくなり、長打も増えている。

 次に、少し条件を限定して、投手視点から数字をみてみる。

 以下の表は、シーズンの先発登板が20以上の投手を対象に、一巡目の成績を1とした場合の各巡目の成績の平均をまとめたもの。

先発投手登板時の打席巡ごとの打撃成績(2)
TTOSamplePABB%K%HR%ISOBABIPAVGOBPSLGOPS
1st
431946351.001.001.001.001.001.001.001.001.00
2nd
431930861.010.931.411.251.031.061.031.081.05
3rd
431759931.050.811.681.381.051.131.091.171.13
4th
430172221.120.721.271.261.101.181.141.181.16
5th
1052390.860.600.251.271.261.351.251.311.26

 先発で20登板以上というのは、シーズンでもある程度以上ローテーションを維持した投手で、対戦打者数も平均で600以上ある。年間である程度サンプル数のある投手を対象にしたということだが、こちらの数字の方が感覚的にはわかりやすいのではないかと思う。

 例えば、奪三振率(K%)でみると、一巡目を1とした場合、三巡目は0.81でおよそ20%減となっている。それだけ三振は取りづらくなるということだ。被本塁打は1.68倍。ただし、被本塁打は頻度として少ないので若干数字が極端になっている可能性がある。とはいえ、ISOは1.38倍でヒットを打たれた場合の長打リスクは40%近く上昇する。出塁率をアウトの取りやすさ、OPSを失点率に近似するものとして考えると、平均的には三巡目は5回あたりに回ってくるので、中盤以降では序盤に比べて、10%増しでアウトが取りづらくなり、13%増しで失点しやすくなる。

 この10%や13%をどの程度の期待あるいはリスクととらえるかはケースバイケースになるだろうが、見る側からすれば、中盤は得点の期待、あるいは失点のリスクが高まり、ゲームが面白くなるポイントだとは言えるだろう。