育成に必要な打席数

 2005年から2016年までのデータを対象に、2004年以降にドラフトで入団した選手がレギュラー獲得までにかかった期間、打席数等を調べた。
 表中、18歳以下とあるのは概ね高卒選手で、19歳以上は大卒もしくは社会人経由の選手である。(年齢による区別のみで、厳密には高卒とそれ以外を区別していない)

 また、レギュラーを獲得したかどうかの判断としては1シーズンで捕手は330打席以上、その他は400打席以上あったかどうかを基準とした。これはポジションあたりの打席数としては2/3程度の打席数にあたるので、レギュラー相当という意味では妥当な目安と考えた。

 2004年以降の入団で一軍もしくはファームで出場があった選手が487人(投手除く)。この中でレギュラー相当の打席数があったのが83人、およそ17%だった。

総合

人数期間年齢レギュラー獲得時
打席 / OPS
前年までの一軍
打席 / OPS
ファーム通算
打席 / OPS
18歳以下355.423.2486 / .713329 / .581840 / .711
19歳以上383.826.3525 / .714439 / .621390 / .776
19歳以上*101.024.6460 / .665
18歳以下で入団の選手は平均5.4年、23.2歳

 18歳以下で入団した選手は19歳以上入団の選手に比べレギュラー獲得により年数を要した。平均的な期間としては6年、年齢的には24歳というところが目安になるだろう。その間、ファームで840打席、一軍で329打席に立った。イメージとしては二年目までにファームで500〜600打席、その後一軍でお試し的な起用などされつつ徐々に打席数を増やし、上手くいけば5、6年目に一軍定着という流れになる。

19歳以上で入団の選手は平均3.8年、26.3歳

 19歳以上で入団した選手は育成にかかる年数としては18歳以下の選手に比べ短くはなるものの、年齢的には同じかやや上である。ファームで平均390打席、一軍で439打席を要した。18歳以下にくらべてブレイク前の一軍通算打席が多いのは、大卒・社会人の選手は即戦力であることを期待されるため、一年目から一軍の打席を与えられるケースが多いからだろう。

即戦力だったのは10人

 19歳以上*(アスタリスク付き)は一年目から活躍した、いわゆる即戦力だった選手。こういった選手は集計対象とした期間で10人のみ。

 続いて、ポジション別に見ていこう。

ポジション別

内野手

人数期間年齢レギュラー獲得時
打席 / OPS
前年までの一軍
打席 / OPS
ファーム通算
打席 / OPS
18歳以下165.223.0494 / .684268 / .547893 / .69
19歳以上193.726.3528 / .697436 / .654354 / .761
19歳以上*41.024.5473 / .709
18歳以下 川端(スワローズ)の例

 1年目(2006年)、ファームで316打席(.619)、一軍で23打席(.418)。
 2年目はファームで186打席(.736)、一軍で13打席(.382)。この年は故障もあったようだ。
 3年目はファームで109打席(.796)、一軍で115打席(.621)。
 4年目はファームで74打席(.901)、一軍で42打席(.595)。この年も故障あり。
 5年目は飛躍の年。ファームで262打席(.691)、一軍で214打席(.739)。
 6年目、24歳。この年、一軍で457打席(.696)。ショートのレギュラーに。ファームで合計954打席(OPS.707)、一軍で合計407打席(.662)を要した。怪我がなければもう一年早まったかもしれない。

19歳以上 松田(ホークス)の例

 松田は1年目(2006年)にファームで178打席(OPS.720)、一軍で220打席(.582)。
 2年目はファームで158打席(1.010)、一軍で221打席(.772)。
 3年目、25歳のシーズンに一軍に定着(595打席、.790)。ファームで336打席、一軍で441打席要したということになる。

即戦力

 2005〜2016年までの期間でわずか4人しかおらず、稀な例だというのがわかる。この4人は梵、渡辺直人、大引、茂木で、ショートを守れて打力もそれなりに期待できるというのが共通点だろう。

外野手

人数期間年齢レギュラー獲得時
打席 / OPS
前年までの一軍
打席 / OPS
ファーム通算
打席 / OPS
18歳以下125.323.2524 / .772363 / .652981 / .763
19歳以上173.826.1535 / .745384 / .586465 / .798
19歳以上*41.024.8491 / .708
18歳以下 陽岱鋼の例

 1年目(2006年)、ファームで398打席(.745)。一軍の出場はなし。
 2年目、ファームで135打席(.812)。一軍で116打席(.608)。
 3年目、ファームで274打席(.940)。一軍で123打席(.409)。
 4年目、ファームで334打席(.856)。一軍で13打席(.432)。このあたりまではファームでは高成績を残しつつも一軍では苦戦が続いていたようだ。
 5年目、ファームで18打席(1.007)。一軍で281打席(.628)。
 6年目、一軍で141試合603打席(.673)。一見OPSが低すぎるような気もするが、この年は超低反発球の年なのでこれでも十分立派な成績。
 ファーム通算1159打席(.835)、一軍前年まで533打席(.569)。

19歳以上 柳田(ホークス)の例

 1年目(2011年)、ファームで290打席(.893)、一軍で5打席(.000)。
 2年目、ファームで213打席(.791)、一軍で212打席(.685)。
 3年目、ファームで36打席(.575)、一軍で337打席(.860)。この年が実質的なブレイクイヤー。
 4年目に全試合出場してセンターのレギュラーとして定着する。615打席、OPS.865。ファーム通算539打席(.832)、一軍前年まで554打席(.784)。

 外野手の場合、レギュラーとして要求される打力が高いためファームの通算OPS内野手に比べれば高いのだが、その分育成に期間も打席数も要するということがありそうだ。

捕手

人数期間年齢レギュラー獲得時
打席 / OPS
前年までの一軍
打席 / OPS
ファーム通算
打席 / OPS
18歳以下75.923.7402 / .679401 / .52475 / .67
19歳以上25.528.0405 / .611935 / .6196 / .743
19歳以上*21.024.5374 / .493
18歳以下

 18歳以下入団の選手はレギュラーになるまでに平均5.9年、23.7歳。ファームで475打席、一軍で401打席を要する。今回のデータでは最も育成に時間がかかるポジション。出場機会を得ること自体が他のポジションに比べ大変なようだ。

19歳以上

 19歳以上で入団した選手は、一軍でレギュラー格になるまでに5.5年、ファームで96打席、一軍で935打席を要する。ファームの打席が少ないのは即戦力として期待されることが多く、控え捕手としてベンチに置かれることが多いからではないかと思う。といっても、サンプルが2件のみでは何が言えるわけでもないが。(ちなみに、この2名はファイターズの大野とジャイアンツの小林)