クライマックスシリーズ改革試案/週間レビュー (8月20日 - 9月15日) セ・リーグ

クライマックスシリーズ改革試案

 セ・リーグでは9月15日時点でカープがマジック6と優勝まで秒読み段階に入っている。そうなると喧しくなってくるのがクライマックスシリーズ不要論や改革論などである。毎年この時期になるとプロ野球OBや記者などから多様というほどでもないがいくつかの改革案やラジカルなものだと廃止論が出てくる。クライマックスシリーズ肯定派であっても、興行のための消極的支持からポストシーズンを称揚する意味での積極的支持までそのトーンは様々だ。ただいずれにしても、否定派は言うに及ばず、肯定派であっても制度に対して何かしらの不満を持っているケースは少なくないようだし、現行の制度をそのまま100%支持するという論調のニュース記事を見かけることはほとんどないように思う。そこで一度、CSに対する主な不満点とそれに対応する改革案を整理した上で試案を出してみたい。

■ 現行のクライマックスシリーズに対する主な不満

 巷のクライマックスシリーズに対する不満の源泉は大きく分けると以下の二つに収斂されると思う。

  • (1)ゲーム的な妥当性のなさ
  • (2)リーグ優勝と日本シリーズの意義

 (1)のゲーム的な妥当性のなさとは、NPBの場合、同一リーグの各チームと均等に対戦した上で順位決定をするため、順位決定後にさらに同一リーグで事実上の順位決定戦をすることに妥当性が見いだせないということ。つまり、レギュラーシーズンからポストシーズンにかけてを一つのゲームとしてみた場合、(現行の)CSというポストシーズンの段階が存在する理由を合理的には説明しづらいのだ。だからもっぱらCS制度の妥当性を説明するには、消化試合を減らすためという商売上の理由が真っ先に挙げられることになる。このような、制度としての恰好の悪さが後段で述べる地区分けなどの改革案につながっているのだろうと思われる。

 (2)は、一般には日本シリーズにはペナントレースを制覇したチームが進出すべきというくらいの意味ではあるが、言い換えればレギュラーシーズンの結果がより重視されるべきということになるだろう。これは(1)とも関係するが、CSの興行的な意義は認めるものの、あくまで弥縫策的な後付け制度に過ぎず、本来の形─リーグ優勝から日本シリーズの流れ─は出来る限り維持されるべきという考えでもある。そして、これが現行の上位チームに対するアドバンテージの根拠のようにもなっているし、後段で述べるアドバンテージ強化などの改革案につながっている。

 次にこれらの不満に対応する主な改革案というものを見ていこう。

■ 現行のクライマックスシリーズに対する主な改革案

 先述した不満点から挙げられる改革案には以下のようなものがある。

  • (A)上位チームのアドバンテージ強化
  • (B)複数地区制の導入

 (A)は不満点の(2)に対応する。ゲーム差などでアドバンテージに重みをつけリーグ優勝チームの優位性を強化し、出来る限りリーグ優勝チームが日本シリーズに進出できる仕組みにしておこうというもの。日本シリーズをリーグ優勝したチーム同士で行うことを必須条件にするのであればCS自体を廃止するほかないのだが、(A)は興行的なメリットにも理解を示した上での妥協案ということになるだろう。

 (B)は不満点(1)に対応する。1リーグ3地区制や球団を増やして2リーグ複数地区制にするなどしてポストシーズにあわせてレギュラーシーズン自体を変え、(1)で挙げたゲーム的な妥当性のなさを解消しようとするもの。これは、ポストシーズンの試み自体は良いのだから、それにあわせてレギュラーシーズンの制度を適合させようという案になる。

 (A)はレギュラーシーズンを重視する立場ともいえるし、逆に(B)はポストシーズンを重視する立場とも言える。あるいは、(A)は大改革を伴わなくとも実現可能な消極的な改善案、(B)は大改革を伴う即座には実現の難しい理想論としての改革案とも言えるだろう。

改革案の実現可能性

 ポストシーズンのゲームとしての妥当性を担保するには(B)のようにレギュラーシーズンを変革せざるを得ない。だが一方で、地区分けやエクスパンションは既存の各球団に対してはインセンティブが働かないため、よほど力量のある人物がコミッショナーになるなどして成長戦略や将来像などの大きな画を示せなければ、利害当事者である球団オーナーや球団の親会社などを説得するのは難しいだろう。また、現状ではコミッショナー法曹界や警察官僚OBから選ばれているようだが、こういった人選をそもそも変えなければならない。ポストシーズンに盛り上がりのピークが来るようにしたいのであればレギュラーシーズン改革が本筋ではあるのだが、既存球団主体でこういった改革ができるというイメージが湧きにくい。

 また、(A)のアドバンテージ強化案にしても、基本的には上位チームの1勝の価値を上げるということになるだろうから(下位チームの1勝の価値を下げる方向だと今よりもさらに長いスケジュールを組まなければならない)、これは試合数減を意味し、試合数減は売上減を意味する。これはこれで各球団の賛同が得にくいのではないかと思われるし、そもそもアドバンテージ強化案では最初に挙げた不満点(1)は解消されない。

■ 試案・日本シリーズ拡張案

 これらのことを踏まえた上で、さらにどういった改革案があるだろうか。

 当ブログで提案したいのは、以下に説明するような、CSを廃止して日本シリーズを拡張する案だ。

  • (1)レギュラーシーズンでの順位決定後に事実上の順位決定戦(現行のCS)は行わない。仮に行うとしても、2位と3位のワンデープレーオフのみとする。
  • (2)リーグ優勝チームと別リーグの2位のチーム(もしくはワンデープレーオフの勝者)が対戦する。このシリーズを日本シリーズファーストステージ(仮)と呼ぶことにする。
  • (3)日本シリーズファーストステージは4勝先取でホームビジターを入れかえながら行う。
  • (4)日本シリーズファーストステージを勝ち上がったチーム同士で日本シリーズファイナルステージ(仮)を行う。

 まず(1)について、先述したように同一カテゴリーでの順位決定が終わった直後に再度同じカテゴリーで順位決定戦を行うという歪さに問題の源泉があるので、これは廃止する。ワンデープレーオフに言及したのは、ポストシーズンに進出できるチーム数が減ることによるレギュラーシーズンでの興行的なメリット縮小の可能性を懸念したため。また、なぜワンデー(1試合のみ)なのかというと、現行制度でも3位チームにはポストシーズンの興行的なメリットはないからで、肝心のレギュラーシーズンでの消化試合減が達成できれば良いと考えた。

 (2)は言葉遊びのようでもあるが、リーグ優勝チームと別リーグの2位チーム(もしくはプレーオフ勝者)の対戦から”日本シリーズ”と呼称してしまえば良いのではないか。つまり、各リーグのペナントレースを制覇したチームは無条件で日本シリーズに進出できるというわけだ。

 (3)はCSを廃止したことによる2位チームのポストシーズンでの興行的なメリットを担保するため。ワンデープレーオフを行った場合、スケジュールによっては2位もしくは3位のチームは一番良い先発投手を第4戦か第5戦まで使えないというのがディスアドバンテージにはなるが、それ以外の特別なアドバンテージは不要だろう。

 (1)と(2)によって最初に挙げた不満点の多くは解消できるのではないかと思う。これまでどおりの日本シリーズではないが、とりあえず優勝チームは無条件で日本シリーズに進出するし、弥縫策的な順位決定後の順位決定戦は行われない。(3)によって、現状の興行的なメリットは維持されるので、少なくとも収益上のデメリットは存在しない。

 想定される反対意見としては、この案で日本シリーズファイナルステージと仮称している階層的には現在の日本シリーズに位置する部分が、同一リーグ同士の対戦になるケースが出てくる点だろう。これに対する説得力のある回答は持ち合わせていないのだが、トーナメント全体を新しい日本シリーズとして捉えるのが今回の案なので、最後が同一リーグ同士の対戦になることは特に問題視していない。この部分を受け入れられるかどうかが重要ではあるが、果たしてどうだろうか。

週間レビュー (8月20日 - 9月15日) セ・リーグ

■ 各数値について
  • RDは得失点差、BatはwOBAの得点換算値(パークファクター補正あり)=打撃での貢献度、BsRは走塁の得点換算値、PitはFIPの得点換算値(パークファクター補正あり)=投球での貢献度
  • Fldは打球種別(ゴロなど)の奪アウト率から守備を得点換算したもの。UZRとは異なるので注意
  • ポジション別打撃および投球貢献度のSP、RPはそれぞれ先発投手と救援投手の投球での貢献度=FIPの得点換算値(パークファクター補正あり)、その他は各ポジションの打撃での貢献度=wOBAの得点換算値(パークファクター補正あり)
  • WPAは参考程度(精度的に)
  • ルーキー打撃貢献および投球貢献は最優秀新人の資格に該当する選手が対象
  • 最近15試合の成績、最近30試合の成績、シーズン成績は9月15日時点の成績
■ 勝敗およびスタッツ
勝敗およびスタッツ (最近15試合)
TmWLW%GBRS/9RA/9RDwOBABABIPFIPDERLOB%BatBsRPitFldTotalxW%
ヤクルト86.5710.04.194.53-5.314.3094.81.73369.7 %-15.3-1.90.912.9-3.4.484
中日86.5710.05.655.276.329.3185.39.68471.6 %2.84.1-17.2-1.0-11.3.427
DeNA87.5330.54.054.85-12.324.2884.26.67070.3 %-2.1-1.36.0-6.8-4.2.442
広島87.5330.54.644.73-1.342.2654.11.66470.6 %3.90.97.4-1.710.5.562
阪神69.4002.55.474.4514.358.3414.36.66874.3 %18.52.9-5.2-9.66.6.547
巨人49.3083.54.154.56-6.330.2944.29.68870.3 %-0.41.16.6-7.00.3.476
勝敗およびスタッツ (最近30試合)
TmWLW%GBRS/9RA/9RDwOBABABIPFIPDERLOB%BatBsRPitFldTotalxW%
ヤクルト1811.6210.04.874.519.347.3254.60.70171.5 %-5.71.010.44.310.0.553
広島1514.5173.04.865.14-8.349.2954.73.66671.3 %14.63.0-3.8-10.03.9.507
中日1514.5173.05.274.8413.336.3305.58.69176.2 %15.36.5-42.16.8-13.5.453
DeNA1416.4674.54.365.24-26.347.2964.31.65768.9 %16.7-1.310.8-18.08.2.499
阪神1317.4335.54.534.405.341.3344.38.66375.2 %12.10.00.0-19.9-7.9.472
巨人1116.4076.03.994.21-6.325.3024.56.69574.5 %-5.6-0.84.01.1-1.2.472
勝敗およびスタッツ (シーズン)
TmWLW%GBRS/9RA/9RDwOBABABIPFIPDERLOB%BatBsRPitFldTotalxW%
広島7451.5920.05.184.5873.355.3084.59.69272.0 %86.92.81.412.5103.6.572
ヤクルト6461.51210.04.704.84-18.341.3074.63.68970.3 %-38.5-1.632.7-18.1-25.6.498
巨人6067.47215.04.414.1336.329.3054.48.69774.9 %-10.7-8.225.124.130.3.502
中日6070.46216.54.394.66-31.322.3135.00.70372.9 %7.16.7-100.843.7-43.4.456
DeNA5767.46016.54.024.71-84.322.2864.42.67672.1 %-27.0-1.132.7-20.4-15.8.457
阪神5565.45816.54.114.47-40.320.3074.23.67672.2 %-27.51.510.3-41.8-57.4.452
ポジション別打撃および投球貢献度 (最近15試合)
TmC1B2BSS3BRFCFLFDHPHPSPRP
広島-2.10.20.1-3.44.70.68.0-3.83.70.4-0.94.23.1
阪神3.7-2.20.1-0.87.8-1.0-0.22.5-2.25.43.8-9.94.4
DeNA0.2-0.9-1.2-1.80.22.30.3-0.22.4-3.12.42.23.7
巨人-3.18.7-1.15.92.6-3.9-2.22.2-1.8-5.6-2.87.4-0.6
ヤクルト-0.7-1.22.0-4.8-3.0-2.70.5-7.2-0.4-0.11.8-1.32.1
中日-0.63.0-3.42.3-1.60.60.05.4-1.7-1.7-1.3-15.8-1.5
ポジション別打撃および投球貢献度 (最近30試合)
TmC1B2BSS3BRFCFLFDHPHPSPRP
DeNA2.1-7.3-2.25.34.26.8-2.78.12.40.92.51.39.4
広島1.8-0.2-5.3-8.44.210.319.0-9.83.72.70.17.3-11.3
阪神7.3-8.6-2.4-2.95.72.9-4.35.7-2.27.23.1-5.55.2
ヤクルト-3.12.37.0-5.6-3.7-6.73.0-2.4-0.4-2.45.910.6-0.2
巨人-4.88.7-5.97.04.3-8.8-0.40.8-1.80.0-4.411.5-7.1
中日-5.115.72.70.8-0.87.30.50.5-1.7-4.2-2.0-28.5-13.5
ポジション別打撃および投球貢献度 (シーズン)
TmC1B2BSS3BRFCFLFDHPHPSPRP
広島23.3-10.9-10.56.6-3.433.457.8-15.43.74.30.05.0-3.6
巨人-3.97.8-20.141.311.1-16.4-11.7-11.5-1.8-2.8-0.225.80.5
DeNA-12.8-7.3-19.9-13.818.9-7.1-0.814.82.4-1.4-1.81.330.4
ヤクルト-15.8-1.238.6-17.8-17.0-30.2-0.7-3.1-0.4-3.46.916.116.1
阪神10.3-20.87.80.4-7.98.0-38.85.5-2.211.2-0.19.00.9
中日-1.131.8-1.6-17.4-2.512.7-9.18.7-1.7-8.1-5.2-59.3-40.3
■ 8月20日 - 9月15日の成績
勝敗および得失点 (8月20日 - 9月15日)
TmWLDW%RS/9RA/9RDOpp
ヤクルト1391.5914.744.662
D(3-3-0), 巨(2-0-1), 広(1-5-0), 阪(5-0-0), 中(2-1-0)
中日1291.5715.314.7413
ヤ(1-2-0), D(1-2-0), 巨(0-2-1), 広(6-1-0), 阪(4-2-0)
DeNA1190.5504.194.45-6
ヤ(3-3-0), 巨(5-1-0), 広(1-2-0), 阪(0-2-0), 中(2-1-0)
広島12100.5455.075.24-5
ヤ(5-1-0), D(2-1-0), 巨(3-0-0), 阪(1-2-0), 中(1-6-0)
巨人6112.3533.634.14-9
ヤ(0-2-1), D(1-5-0), 広(0-3-0), 阪(3-1-0), 中(2-0-1)
阪神7130.3504.554.325
ヤ(0-5-0), D(2-0-0), 巨(1-3-0), 広(2-1-0), 中(2-4-0)
各種スタッツ (8月20日 - 9月15日)
TmwOBABABIPFIPDERLOB%BatBsRPitFldTotal
DeNA.339.2894.13.67372.5 %5.7-1.110.4-4.610.5
広島.357.2904.71.66570.3 %15.63.8-2.2-7.29.9
ヤクルト.340.3174.79.70870.8 %-4.5-0.31.38.34.7
阪神.336.3274.25.66974.4 %7.61.8-1.0-9.8-1.4
巨人.315.2904.46.70973.4 %-9.70.24.52.2-2.8
中日.334.3195.47.69476.0 %7.83.7-26.97.9-7.5
ポジション別打撃および投球貢献度 (8月20日 - 9月15日)
TmC1B2BSS3BRFCFLFDHPHPSPRP
DeNA2.6-3.50.43.1-1.62.0-0.94.90.0-1.81.35.25.2
広島0.5-0.5-3.8-4.93.15.714.7-4.00.04.00.90.7-3.0
阪神3.0-5.7-2.2-3.25.8-0.1-1.83.20.06.23.2-7.56.3
巨人-2.58.3-3.27.22.9-8.7-4.41.70.0-6.2-2.96.1-1.4
ヤクルト-2.12.96.1-6.1-3.1-3.63.5-4.30.0-3.05.22.0-0.7
中日-4.210.1-1.51.40.90.32.02.60.0-2.3-1.3-20.9-6.0
打撃貢献ベスト (8月20日 - 9月15日)
NameTmPAHRRRBISBAVGOBPSLGwOBABatWPA
丸佳浩104922222.367.519.759.53416.72.47
岡本和真84814240.394.524.818.55115.02.01
ビシエド102716221.422.471.689.48213.50.71
大山悠輔73414131.359.438.656.4799.30.41
鈴木誠也98714160.282.378.624.4458.70.19
打撃貢献ワースト (8月20日 - 9月15日)
NameTmPAHRRRBISBAVGOBPSLGwOBABatWPA
亀井善行580430.125.155.143.152-8.4-1.08
西浦直亨1010860.233.296.267.250-7.5-1.08
田中広輔9301055.230.280.264.251-6.2-0.49
小林誠司360310.094.171.125.146-5.4-0.38
松井雅人560540.196.255.255.231-4.2-0.45
投球貢献ベスト (8月20日 - 9月15日)
NameTmGGSWLSVIPERAFIPxFIPPitWPA
菅野智之4421030.01.802.122.946.90.39
原樹理3311021.22.491.863.395.30.71
一岡竜司12010011.20.000.671.454.50.64
メルセデス3321024.01.132.744.024.20.69
井納翔一D4431026.21.693.083.343.80.99
投球貢献ワースト (8月20日 - 9月15日)
NameTmGGSWLSVIPERAFIPxFIPPitWPA
藤嶋健人3320019.04.266.635.87-6.9-0.27
小野泰己4403018.28.206.264.70-6.3-0.65
メッセンジャー4401023.15.015.855.14-5.3-0.27
山口俊310108.05.639.406.52-4.7-0.35
小熊凌祐4413020.27.845.624.07-3.6-0.89
ルーキー打撃貢献ベスト (8月20日 - 9月15日)
NameTmPAHRRRBISBAVGOBPSLGwOBABatWPA
細川成也D141120.308.357.615.4140.90.25
曽根海成40110.250.250.750.4480.4-0.04
宇佐見真吾10000.000.000.000.000-0.30.00
佐野恵太D91130.111.111.444.231-0.7-0.26
塩見泰隆60000.000.000.000.159-0.9-0.04
ルーキー投球貢献ベスト (8月20日 - 9月15日)
NameTmGGSWLSVIPERAFIPxFIPPitWPA
東克樹D4430025.01.082.872.883.80.79
平良拳太郎D4421021.24.153.893.411.3-0.14
才木浩人4422023.13.093.453.711.20.30
中川皓太700007.03.863.723.170.50.26
中尾輝500005.24.764.214.130.30.25