ブルペンのオーバーワーク状況 (7月11日)

 以前、2015年から2017年までのブルペンの負荷のかかった登板の割合を調べた。

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 この記事では負荷のかかった登板を、『登板前の直近7日間で”連投含む”4登板以上もしくは60球以上投げているかどうか』と『登板前の直近7日間で4登板以上もしくは45球以上投げているかどうか』の二つの基準で示した。

 今回の記事では、中間をとってというか、基準を一つにする意味で『登板前の直近7日間で4登板以上もしくは60球以上投げているかどうか』を基準にし、今シーズンのここまでの各チームのブルペンのオーバーワーク状況を示してみたい。
 ちなみに、以前の記事でも書いたが、基準となっている4登板以上とか60球以上とかに何かしらのエビデンスがあって設定しているわけではなく、シーズン全体の登板数などから演繹して、おおよその目安として設定しているだけである。

 下記、表中の”Over”の項目は上記の基準に達した登板であり、つまりオーバーワークとなっている(とここでは考える)登板数。”%”はリリーフ登板に占めるオーバーワーク登板の割合。”+”は今年のNPB平均と比較してオーバーワーク登板の割合がどれだけ多いか、あるいは少ないか。
 また、チーム別の表での”IP/G”は先発投手の登板あたりの投球回。

 また、予め断っておくと、今年の全登板に占めるオーバーワーク登板の割合は、例年よりも高く、現時点ではNPB平均が約13%となっている。集計した2007年以降でみると、年によってばらつきは結構あるのだが、それでも概ね8%前後といったところなので、13%というのはかなり高い部類に入るだろう。

セ・リーグ

オーバーワークランキング 27登板以上 (7月11日時点)
NameTmGIPPOver%+
近藤一樹3739.16861027.0 %5.4
澤村拓一3236.0680928.1 %5.0
アドゥワ誠2933.1595827.6 %4.4
エスコバーD3432.0529823.5 %3.7
中尾輝3839.0704821.1 %3.2
中﨑翔太3332.0621721.2 %2.9
マシソン2929.1463620.7 %2.4
砂田毅樹D3930.0515615.4 %1.1
石山泰稚3436.2550514.7 %0.7
三上朋也D3532.1501514.3 %0.6
山﨑康晃D3232.0494412.5 %0.0
パットンD2826.1491310.7 %-0.5
岩崎優3028.0560310.0 %-0.8
ジャクソン3332.256539.1 %-1.1
田島慎二2827.043927.1 %-1.5
風張蓮3134.059926.5 %-1.9
祖父江大輔3132.256726.5 %-1.9
一岡竜司2726.044913.7 %-2.4
ドリス2827.144413.6 %-2.5
三嶋一輝D3238.064313.1 %-3.0
鈴木博志3937.262512.6 %-3.9

 まず、セ・リーグでは、最も負荷のかかった登板が多いのがスワローズの近藤ということになっている。37登板に対して、オーバーワーク登板が10。例えば、表中最下位のドラゴンズの鈴木と比べてみるとその差がわかるだろう。鈴木は登板数が39で、近藤よりも多いのだが、オーバーワーク登板はわずかに1。全体の登板数や投球回はほぼ同じでも、近藤の方が短いインターバルでの負荷のかかった登板がそれだけ多かったということになる。

 次にチーム別の登板状況を見てみよう。

チーム別ブルペンのオーバーワーク登板数 (7月11日時点)
TmGIPIP/GOver%+
ヤクルト247269.25.33514.2 %3.7
DeNA272268.25.53412.5 %-0.4
巨人205228.26.12914.1 %3.1
広島206221.05.92713.1 %0.9
中日213226.16.0198.9 %-8.0
阪神214222.15.9136.1 %-14.1

 基本的には先発投手の投球回(IP/G)が多いチームの方がオーバーワークを防げるのではあるが、それだけではないということもわかるだろう。例えば、ジャイアンツとタイガースではジャイアンツの方が、IP/Gは6.1とタイガースの5.9に比べて高いが、オーバーワーク登板はジャイアンツが29に対してタイガースが13と倍以上の差がある。もちろん、こういった結果になるのには、勝ち進み方(僅差での連勝が多かったとか)やリリーフ投手の層の厚さ、あるいはブルペンの起用方法が確率できず(上手くいかず)、必然的に登板がばらけた等々、理由は様々だろうから、これだけでベンチの運用の巧拙を判断するわけにはいかないが、結果としてこういった差になっている。

 また、ベイスターズの数値には注目しておきたい。というのも、リリーフの登板数としてはリーグでも最多だし、オーバーワーク登板の数自体も多い(リーグで二番目)のだが、オーバーワーク登板の割合としてはNPBの平均をやや下まわる。これが、偶然そうなのかベンチワークによるものなのかはわからないが(ラミレス監督になってから同様の傾向がみられるのでおそらくベンチワークに由来するものだと思うが)、エスコバーは例外としても、見た目ほどには、ブルペンの酷使度は高くないかもしれない。といっても、今年のNPB平均と比較しての話で、例年に比べればやはり高いのではあるが。

パ・リーグ

オーバーワークランキング 27登板以上 (7月11日時点)
NameTmGIPPOver%+
内竜也3938.25901230.8 %7.1
増井浩俊3840.16631128.9 %6.2
山本由伸3535.05011028.6 %5.6
吉田一将4041.26471025.0 %5.0
近藤大亮3334.1575824.2 %3.9
松永昂大3119.2274722.6 %3.1
増田達至西2725.2482622.2 %2.6
ワグナー西2926.0495620.7 %2.4
公文克彦2929.2507620.7 %2.4
加治屋蓮4036.2616615.0 %1.0
野田昇吾西2819.1367517.9 %1.5
大谷智久3030.0518516.7 %1.2
平井克典西3127.0518516.1 %1.1
森唯斗3431.0628514.7 %0.7
高梨雄平3625.1449513.9 %0.5
澤田圭2727.1391414.8 %0.6
トンキン3231.0509412.5 %0.0
松井裕樹2726.1515311.1 %-0.4
黒木優3127.042839.7 %-0.9
石川直也3329.255039.1 %-1.1
嘉弥真新也3616.126538.3 %-1.5
モイネロ3731.159538.1 %-1.6
益田直也3737.064238.1 %-1.6
南昌輝3331.059426.1 %-2.1
宮西尚生2720.136413.7 %-2.4
チーム別ブルペンのオーバーワーク登板数 (7月11日時点)
TmGIPIP/GOver%+
オリックス250259.15.84919.6 %17.4
ロッテ250240.06.03815.2 %6.4
西武238230.05.93213.4 %1.9
ソフトバンク236224.05.92912.3 %-0.9
楽天217226.16.12511.5 %-2.5
日本ハム226225.26.1219.3 %-7.6

 パ・リーグではバファローズのオーバーワーク登板が最も多い。増井、山本、吉田、近藤といったところだが、少し負荷がかかりすぎているかもしれない。

 ファイターズは、一貫してオーバーワーク登板の割合が低く、チーム単位でブルペンの酷使を避けるような取り組み(登板間隔や投球数の管理)を行っているのだろうと思われる。